なぜ荒木一郎が描く世界はいつでもかっこいいのか

荒木一郎は希有の人である。

役者としてもいいし、音楽をつくらせれば誰にも真似ができないような曲をつくる。実は小説も素晴らしい。しかしその値打ちは正しく認められていない。嫉妬されやすいのかもしれない。

「ありんこアフターダーク」は渋谷を舞台にした青春小説だ。時代が東京オリンピック前だから風景は相当に今とは違う。ありんこという百軒店のジャズ喫茶に集まる少年たちが、行ける大学に行くのをやめたり、バンドでお金を稼いだり、それがもとでやくざに追われたり、破滅的な衝動で自分や仲間や家族やガールフレンドを傷つけたり、というお話だけれど描かれる街がとてもいい。今よりも気分ははるかに都会的だ。

今は文庫にもなっていない。つまり絶版。で、図書館で借りました。ビバ、図書館。

表紙の絵は百軒店の、階段がある坂道だろう。ラブホテルの裏を抜けてストリップ小屋の脇へ出る坂道。いかがわしいことこの上ない場所なのに、坂の途中におしゃれな輸入衣料のセレクトショップもあったなあ。

そういったオシャレさがある、素敵な小説だ。


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